そろそろジブリが「借り暮らしのアダルッティ」ってタイトルを発売してもいいと思うんです。
おっさんが勇気を出してAVを借りる話。
決してジブリを馬鹿にしているわけではなく、そんくらいドラマが満載なんだ。あのカーテンの奥は。
◇
なんかね、地元のレンタルビデオ屋に「一風変わったアダルトコーナー」ってのがあるんです。
や、本当に変わってるかどうかは知らない。未経験。
でもカーテンに「一風変わったアダルトコーナー」って書いてあるの。
あの現世と異界を分断するR18のカーテンに、もう何度見てもそう書いてあるわけです。
ただでさえ気になるメンズの聖地、いや性地アダルトコーナーにさ、そんな記載あったら気にならない訳がないでしょう?仕方ないでしょう?
なんならキャミソールのお姉ちゃんが「一風変わった乳首があります」ってタグぶら下げて歩いてる感じ、とさえ思う。仕方ない。
え?
ああいいよ、分かった分かった、クラクラな、クラクラ。
ヴァルキリーの服に「乳首が回転してます」って貼ってあるようなもんだ!気にならないわけがないんだ!わかったかこの童貞め!
◇
さて。しかし。
古今東西我々男子一同、中学生の頃からあのカーテンの向こうに花畑を描いていたのは想像のとおりでして。
言ってみたら、法的に超越することが許されるまで、穴が開くほどあのカーテンを見つめていたわけでして。
もっと言えば、穴は無理だけど何食わぬ顔で隙間開けて覗いてたんです。
それはつまり。つまりね。
カップルが土日見る映画を選んでいる隣で。
子連れがアニメを選ばせているはす向かいで。
カーテンがはためく数だけ、AVコーナーに消えていく男の背中を見てきたってこと。
逆に言うと、あの結界を一歩でも超えた時、あの視線が自分に向くという怖さが分かっている。
そういう最終防衛ラインなんです、あれは。
だからこそビデオ屋とか行くとアダルトコーナーって避けがちなんですが、今回ばかりはなんせ事情が違う。
初登場、「一風変わった」アダルトコーナーが私を待っている!
そりゃあさ!今迄避けに避けてきた私でもさ!
対峙せざるを得ないよ!ってのが!ここまでの力説で!ご理解いただけたろうか!はぁはぁ!
そんなこんなで私。ガイハジ戦翌日、先週土曜日。
AVコーナーに入るため、必死に考えて作戦を練りました。
どうすればあのカーテンを超える時、哀愁を漂わせないように出来るのか。
で、出来た作戦。
名付けて、「たまたまライターが落ちちゃって運悪くカーテンを超えちゃった作戦」。
身も蓋もない内容としてはこう、
①アダルトコーナ―手前で、一般DVDを吟味する(知的な人にしか見えない)
②ライターを落とす(うっかりさんにしか見えない)
③ライターがアダルトコーナーの奥に転がる(しょうがない)
ないないづくしのカッコ内三本をお送りして、隙の無さはサザエ級。
何度見直しても穴のない完璧なプラン。もはや勝ち確。
もうね、ここは考えたら即実行すべし。迷ったら負け。
というか多分一瞬でも止まったら多分行かない。ということでいざ逝かん。
◇
スッと場所を移動し、アダルトコーナー入り口横に陣取る私。
そしてゆっくりと。
しかし、しっかりとライターを握りしめ、何気ない顔で新日本プロレスダイジェスト版のDVDを手に。
さあ、これで準備は完了。進路オールグリーン。
「…。」
(だが、ここで焦ってはいけない、周囲の目が最小限になった瞬間にいかないと意味はない)
(待て。機は来る。待て私…機を制するはAVを性する)
(橋本、武藤、サンダーライガー、小島、中西、2000…蝶野…小川…未だっ!!)シャッ!!
カツン、カラ、カラという思った通りの音色、見事な軌道でカーテンの奥に消える着火用具、露骨に”あっちゃー!”みたいな顔をし出す私。
…パーフェクト。
あとは悠々と何食わぬ顔でこのカーテンをくぐるだけ。
「あの…」ふはははは、待ってろよパラダイス!「あのぅ…」ふは…
私「ふぁっ!!!!!??」
おっさん「落としましたよ」
私「え」
おっさん「これ、違います?」
私「え」
決めてた。
投げ込んだライター、聖地から出てくるとこのおっさんにまさかのムーンサルト決めてた。
そのままフォールされたように動けなかった。私が。
私「…」
私「…」
私「…」
おっさん「あの…」
私「ちがいます」
おっさん「え…?い、今、落としてましたよね」
私「ちがいます!」
おっさん「そ、そうですか…」
あっぶねええええ!!!
もうギリッギリでフォール返せた、ほんとあぶねぇ、もうちょっとでやられるところあぶねええええ!!
ちな、そんなこと考えてる間におっさんは私のライターとAVを持って颯爽とレジに向ってました。
いいけど、100円ライターだからいいんだけど!
(仕切り直しだ…!)
フォールを返せたことで落ち着きを取り戻し、目線を新日に戻す私。
(秋山…落ち着け…どうしよ…ライガー…代案…天山…天山懐かしい…)
(蝶野…武藤…橋本…小川…橋本対小川の一戦。)
(小川がSTFで返すの分かってるのに、DDTで最後まで戦った橋本は男らしかった…)
そうだよ。もうさ、小細工やめよう。
男なんだ、法にも天にも許されているのに、何をコソコソする必要があるんだ。
周囲の目線も受け入れろ。恥ずべきことは、ない。
さあ、いこう。
ってカーテンを潜ろうとしたら、橋本対小川のDVDもったままなの忘れてた。
何故か、ホント何でかわからないんだけど、ここですこぶる動揺した。
あ、ヤバい、これ持っては流石に入れない、戻さなきゃ!バタバタ
あ、入らない!え!なんで!グイグイ
途中で何かにつっかえて収まらない!なんで!ここから取ったのになんでよ!グイグイグイグイ
あああああ!これじゃAVコーナーの前でガチャガチャしてるヤバいやつみたいになる!ガチャガチャ!!
早く!あああああ!戻っれえええええ!あああああ!
ガッシャーン!!
気がついたらAVコーナー入り口に、DVD棚から闘魂三銃士が飛び出してた。
奥から蝶野、橋本、蝶野、武藤。蝶野だけ二本飛んでた。
もうね、流石にここから挽回はできなかったよ。
最後にDVD拾うフリしてカーテンの下から覗き見た世界は、15年前と変わらぬ様相だった。
新日バンザイ。
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